ピアサポートの感覚を大切に
ピアサポートとは、「同様の経験をした仲間同士による対等な関係性の中で生まれる支え合いの営みのすべて」という定義があります。
B氏は、このインフォーマル(自然発生的)なピアサポートの中でこそ味わえる、理屈では説明できない、あたたかく心地よい感覚を指して「ピアサポートの感覚」と呼んでいます。
B氏は喫茶店で、デイケアで出会った友人と3時間4時間話をする日々を過ごすうちに、ほっこりとした気持ちになれたと話しています。そこでのB氏たちは、障害による生活のしづらさや悩み事を吐き出し合うだけでなく、純粋にその場でのおしゃべりを楽しんでいました。
これがB氏にとってのピアサポートの原点であり、ここで味わえたものが「ピアサポートの感覚」です。
B氏が初めて「ピアスタッフ」という言葉を耳にしたのは、デイケアに通っている頃でした。
とある会議に参加し、そこで出会ったピアスタッフの人たちの姿を見て、「今まで負の存在でしかなかった自身の障害の経験を活かして、もう一度、自立した生活ができるかもしれない」と希望を感じました。
B氏はその後、ピアスタッフとして働き始めます。しかし、働いていく中で、違和感を覚えました。
ピアサポーターとしての活動と、ピアスタッフとして働くことの間に大きな隔たりを感じたからです。
ピアサポートの感覚が、ピアスタッフとして働いているときには活かせていませんでした。
給料をもらっているから、他の支援者と同じような支援をしなくてはならないと、錯覚してしまったのです。ピアサポートの感覚を失った、「名ばかりピアスタッフ」になっていました。
このような中、B氏はピアスタッフとして働くモチベーションが保てなくなり、退職しました。
この出来事があって、改めてピアスタッフの役割とは何かを考えるきっかけとなったのです。
共にリカバリーしていくということ
B氏は、利用者と関わり、共にリカバリーしていくことこそが、ピアスタッフとしての役割だと確信しました。そして、「ピアサポートの感覚を味わえる場づくり」と「安易な助言をするのではなく、一緒に考えていくこと」を大切にしながらピアスタッフとして働いています。
主体的であることは、リカバリーにとって不可欠です。
B氏は、ピアサポートの感覚をきっかけに取り戻した主体性によって、自分の人生を自分で選択し、今の自分らしいリカバリーの形を手に入れることができました。
支援者からの支援が必要な時期はあります。しかし、主体性を取り戻すことなくして、自分らしいリカバリーの道は歩めないとB氏は実感しています。
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