当事者のピアサポーター体験
B氏は、27歳の時に精神疾患を抱え、悶々として人生を諦めていた時に、リワークの精神保健福祉士から、「ピアサポーター」という言葉を教えてもらいました。
すぐに「ピアサポーター」をネットで検索し、精神障害者ピアサポート専門員の養成研修に参加しました。
研修会にはたくさんのピアサポーターたちがいました。
病気の経験を活かして働く先輩たちは、希望そのものでした。
共に学び合う中で、私も同じような仕事がしたいと強く思いました。
「病気がありながらも自分らしく生き、働きたい」「もう一度、社会に必要な存在になりたい」という思いでした。
その後、1年ほど今後の人生を模索し、B氏は、同じような経験をした人々に、何か自分も力になることはできないかと考えました。
一度、どん底まで落ちた人生、これ以上落ちることはないと考え、自分の可能性にかけることにしました。
そして、同じような経験をした仲間とともに起業し、ピアサポートの事業所を立ち上げました。
もしも、リカバリーの過程の中で、同じような病気や障害を経験した人が医療福祉の現場で働いていると、回復過程の当事者にはどのようにその姿は映るでしょうか?
病気や障害がありながらも、生活すること、働くことができるというイメージにつながり、励ましとなることと思います。
スタッフの8割が精神疾患当事者の福祉事業所
共に働くスタッフの多くは、当事者経験があります。
現在治療中のスタッフもいます。
しかし、B氏の立ち上げた事業所には、「ピアスタッフ」という職業的役割がありません。
その理由は2つあり、1つ目は、当事者スタッフも一般のスタッフと同様の仕事をこなしているからです。障害の有無に関係なく働いています。
2つ目は、事業所の運営をスタッフも、利用者も協働して行っています。
スタッフと利用者は、サービス提供者と受給者という違いはありますが、精神疾患の当事者という面では、ピアという括りになります。
当事者スタッフがいる状況で始めた事業所なので、さまざまな障害がある中で共に働くこと、状況や必要に応じ、自身が体験した病気や障害の経験を支援の場で活用しています。
日々働いている中で、当事者スタッフが体調不良になることもあります。
その場合、他のスタッフがフォローできるよう、相互に支援し合えるピアサポートのチーム作りを心掛けています。
それぞれの障害特性などにより、得意分野や苦手分野があるので、できる限りスタッフのストレングス(強み)を意識した適材適所の配置を心掛けることで、負荷を軽減して体調の安定化を図るようにしています。
精神疾患がありながら働くというのは、大変なことだと思います。
当事者スタッフは、セルフコントロールをしながら支援の仕事をします。心身にストレスがかかることもあります。
大切なのは、事業体が精神疾患のある人でも当たり前のように働ける環境を作っていくことです。
それには、精神疾患に限らず、その他の病気なども含めた多様性に合わせた環境整備が必要です。
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